これまで、「理学療法士考案 -ダイエットのステップ〇- 」として、ステップ1から4までを解説してきました。次のステップ5はいよいよ「運動」です。
これまでダイエットには運動よりも食事が重要だと説明してきたため、「運動はダイエットにおいて必須ではない」と考える人も多いかもしれません。しかし、理学療法士の立場から申し上げると、ダイエットにおいては運動は「体重を落とすだけでは必要ないが、筋肉を維持するためには行った方がよい」と考えられます。
この記事では筋トレの必要性を説明し、どのような筋トレをすればよいか解説していきます。ステップ1-4までが順調に進んでいて、どのような運動を行ったらよいか、まだ悩んでいる人の参考になれば幸いです。
今回は、無酸素運動(筋トレ)編だよ!
ダイエットのための運動は2種類ある
運動には大きく分けて「無酸素運動」と「有酸素運動」があります。これら2種類の運動を簡単に説明すると、無酸素運動は高強度ですが、長時間は続けることが難しい運動であり、有酸素運動は比較的強度が低いものの、長時間持続可能な運動です。
代表的な無酸素運動は短距離走やダンベルなどを用いたトレーニングなどが挙げられます。一方で、有酸素運動はジョギングや自転車運動、エアロビクスやラジオ体操などの運動が含まれます。
使う筋肉はどう違うの?
さらに、この両者の何が違うかを専門的に説明すると、主に使われる筋肉のタイプが異なっています。無酸素運動は主にType IIb線維の筋肉(速筋、白筋)と言われるミトコンドリア量の少ない筋肉であり、上記で述べたように筋肉の張力は高いですが、疲労しやすく長時間の持続には向いていない特徴があります。
反対に有酸素運動に用いられる筋肉はType I線維の筋肉(遅筋、赤筋)です。この筋肉はミトコンドリアを多く含み、酸素を運ぶミオグロビンが多いため赤く見えるのが特徴です。酸素を多く含有するため低強度の運動を長時間持続する運動に適した筋肉となります。
無酸素運動 | 有酸素運動 | |
筋線維タイプ | Type IIb | Type I |
色 | 白筋 | 赤筋 |
ミトコンドリア | 少 | 多 |
筋出力 | 高い | 低い |
持久力 | 低い | 高い |
わかりやすく2種類にしたけど、実はType IIaという中間の役割を果たす筋線維もあるよ!
ダイエットには有酸素運動よりも無酸素運動(筋トレ)優先で!
ではどちらの運動がダイエットに向いているのか。原則として、消費カロリーが高くなるのは有酸素運動です。これまで何度も説明していた通り「消費カロリー>摂取カロリー」で体重が減りますので、ダイエットには無酸素運動よりも有酸素運動が適しています。
しかし、それでも私はダイエットには無酸素運動から始めることをお勧めします。その理由を以下に解説します。
筋トレの方が時間が短く継続しやすい
肥満の人には運動自体が苦手な人も多いと思います。特にジョギングなどの有酸素運動は同じ運動を長時間続けなければいけないため、「退屈」とか「めんどくさい、手間」などと感じる人も多いでしょう。これまで解説してきたように、ダイエットでは食事がメインであり、運動は+αの要素が大きいです。つまりおまけ。そのため、無酸素運動と有酸素運動どちらを選ぶべきかと考えた時は、自身がやりやすい、続けやすいと思う方を選択するとよいでしょう。
私の経験上、特に運動経験の少ない人は、長く続けないといけないジョギングなどの有酸素運動よりは筋トレなどの無酸素運動の方が継続しやすいと考えています。
個人の好みにもよるから、有酸素運動の方が好きだ!っていう人はジョギングとかをするよいいよ!
筋トレの方が筋肉量の低下を補える
もし運動をせずに、食事だけでダイエットをした場合、確かに体重は減りますが、脂肪量だけではなく筋肉量も減ってしまいます。それを補うには有酸素運動よりも無酸素運動が適しています。
筋トレなどの無酸素運動の特徴として筋肉の同化を促すという特徴があります。同化とはタンパク質を合成し、筋肥大を促すことです。食事療法に加えて、無酸素運動である筋トレを追加することで体重は減らしつつ、筋肉量をできるだけ減らさないようにすることができます。(骨格筋量の維持・増加に向けたたんぱく質摂取の重要性|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)参照)
筋肉を増やすというよりはダイエットによる筋量の低下をできるだけ抑える目的があるということだね!ちなみにタンパク質摂取が重要!
ダイエットのための筋トレは何がいい?
あくまでダイエットの主役は食事です。筋トレは長く続けることができる運動を選択しましょう。この条件に合致していればどのような運動でも問題ありませんが、それでも「どういう筋トレをしたらいいかわからない!」という人に向けて簡単な筋トレを紹介します。
大きい筋肉を鍛えよう
ダイエットのためには体の中の「大きい筋肉」を鍛えることをお勧めします。上半身では大胸筋(胸の筋肉)や三角筋(肩~首にかけての筋肉)、下半身では大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)や大殿筋(お尻の筋肉)です。
なぜ大きい筋肉を鍛えたほうが良いのか。それは筋肉量が大きいほど、代謝量が増えるため、より体重が減りやすい体が作られるからです。また、筋トレはインスリン抵抗性も改善しますが、その効果も大きい筋肉を鍛えたほうが良いと言われています。
上記の理由から、筋トレをするために部位を限定するのであれば、できるだけ大きい筋肉から選択して行っていきましょう。
・筋肉がより大きくなると代謝が上がるため、より体重が減りやすくなる。
・インスリン抵抗性も改善し、より体重が減りやすくなる。
以下に、一番筋トレがしやすい、大胸筋と足の筋肉(大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリングス)の筋トレ方法をお示しします。是非参考にしてください。
大胸筋を鍛える筋トレ方法
大胸筋を鍛える運動の代表は「腕立て伏せ」です。余裕がある人は通常の腕立て伏せを行えばよいと思いますが、最初は「膝つき腕立て伏せ」でもよいでしょう。
回数は10~15回を3セット行いましょう。セット間は1~2分ほど休憩時間をとると良いです。3セットも行えない方は無理せず、最初は1,2セットで十分です。軽めの筋トレですので毎日行ってもいいですが、2日に1回ペースでもよいでしょう。
※痛みがでたら、痛みが治まるまで中止してください。
足の筋肉(大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングス)を鍛える筋トレ方法
足の筋肉、特に大腿四頭筋は人体の中で最大の筋肉と言われています。しっかり鍛えるとダイエットにも有効です。一番代表的な筋トレは「スクワット」です。以下のポイントに注意して行いましょう、
・足幅は肩幅か少し広め
・横から見た時に、膝がつま先より前に出ないように意識する
・ゆっくり曲げてゆっくり伸ばす
以上です。腕立て伏せと同じように、10~15回を3セット、セット間の休憩は1~2分とりましょう。軽めの筋トレですので毎日行ってもいいですが、2日に1回ペースでもよいでしょう。
※痛みがでたら、痛みが治まるまで中止してください。
たったこれだけの筋トレでいいの?
2種類の筋トレを紹介しましたが、読んでいる方の中には「え?たったこれだけでいいの?」と思う方もいるかもしれません。何度も言っているように、ダイエットでは、筋トレは「おまけ」の要素が強いです。メインは食事であり、筋トレはダイエットの過程で筋力を落とさないようにするためだけの方法になります。そもそも、食事も我慢して、運動もやって….となってしまうと負担が強く、すぐにモチベーションが下がり継続できなくなってしまいます。まずは食事内容を変えるなど、効果が高いことから始めていきましょう。
とはいえ、運動が習慣化されると、運動のモチベーションも上がり、少しずつ運動の種類や強度を増やしたくなることもあると思います。そうなったらダイエットが加速していく時期です。腹筋や腕の運動なども追加していきましょう。
ダイエット初期は筋トレは少なくてもいいけど、モチベーションが上がってきたらどんどん増やしていくことがお勧めだよ!
まとめ
筋トレはダイエットでは必須ではありませんが、ダイエットの過程で筋肉を減らさないようにするためには有効な方法です。ステップ4までの食事の改善が順調に進んでいる人は是非筋トレをはじめてみましょう。
この記事のポイントです。
・ダイエットで体重が落ちると、筋肉も落ちる
・筋肉を落とさないようにするには有酸素運動より無酸素運動(筋トレ)
・筋トレは有酸素運動より続けやすい(ことが多い)
・まずは腕立て伏せとスクワットだけで十分
以上です。次回も運動(有酸素運動)編です。是非ご覧ください!
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