運動は健康を保つために必要な生活習慣の一つです。運動を継続することで、健康寿命が長くなることが多くの研究で報告されています。
しかし、多くの情報であふれかえっている現代では、多種多様な運動方法が情報として入ってくるため、「健康のため」にどんな運動をしたらよいか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、健康のために必要な運動を3つだけご紹介します。今現在運動をしている、もしくは始めようと思っている方の参考になれば幸いです。
最初にこの記事の結論です。
・運動の効果は、筋力・体力向上、病気の予防、転倒予防、ケガの予防、抑うつ予防
・上記を網羅する運動は、有酸素運動、ストレッチ、無酸素運動(筋トレ)
・それぞれおすすめの運動は、ウォーキング/ジョギング、ヨガ、スクワット/腕立て伏せ
・有酸素運動:50%、ストレッチ:25%、筋トレ:25%の比率がよいが、継続しやすい運動から始めよう
順に解説していきます。
そもそもなぜ運動が健康にいいのか
運動は健康によいといわれていますが、そもそもなぜ健康によいのかご存じでしょうか?運動には多くの効果があり、薬でこれほどの多くの効果をもたらすものは、この記事を書いている2024年11月現在はありませんので、運動は健康のための一番の薬だと私は考えています。
たぶん僕が生きているうちは運動に勝る薬は出てこないよ!
以下に、運動の5つの主な効果をお示ししていきます。
効果1:筋力、心肺機能を高めて寝たきりを防ぐ
フレイルという言葉を聞いたことがる方もいると思います。フレイルは身体的、認知・精神的、社会的な問題を抱えており、放っておくと介護が必要となりやすい状態のことです。特に身体フレイルは、筋力や体力の低下を招くことで、後述する転倒のリスクを高めたり、生活範囲を狭めたりと生命や健康、生活の質の低下に直結します。下図を参考にすると、フレイル状態にある人は、普段は何とか生活が成り立っているのですが、いざ病気になると、すぐに寝たきりゾーンまで身体機能が低下します。
身体機能が低下してもなんとか歩行が可能な人は、また筋力が戻ってくる望みもありますが、一度寝たきりになってしまうと、その状態から歩行が可能な状態まで戻すのはかなり難しいと考えられます。図に示したように、普段から運動をして身体機能を高く維持し、寝たきりを予防することが重要です。
効果2:血管をしなやかにして、動脈硬化性の疾患を予防する
運動、とくに有酸素運動には血管をしなやかにする効果があると報告されています。この「しなやかに」の正体は血管内皮機能によるものです。この血管内皮機能は、血管の拡張しやすさを表しています。
運動により血流が増大し、その血流が刺激となり一酸化窒素(NO)が産生され、そのNOが血管を拡張させるというメカニズムです。この血管内皮機能の傷害は、動脈硬化の初期段階であり、この血管内皮機能の傷害から動脈硬化は進展していきます(上図)。運動により、血管内皮機能を維持することは動脈硬化伸展の予防になることが報告されています。そして、その効果は特に有酸素運動で高いと報告されています。
効果3:バランス感覚の低下を予防し、転倒を防ぐ
転倒による骨折は、要介護になる原因の約13%となっており、認知症(18%)や脳卒中による脳血管障害(15%)に次ぐ、高い割合となっています。
転倒する原因としては、筋力低下を一番最初にイメージするかもしれませんが、バランス能力や環境、薬の使用や認知機能など、他にも様々な要因が関連してきます。
そのため、運動としては、効果1に挙げたような筋力を向上させる運動も重要ですが、それだけではなく、バランス能力を高めるような運動が、転倒予防には重要となってきます。
効果4:身体の柔軟性を保ち、ケガや痛みを予防する
身体の柔軟性の低下は身体の痛みやケガをを招きやすい状態を作ります。特に腰痛や肩、首の痛みが起きやすいです。腰痛を例に挙げると、ハムストリングスという太ももの裏側の筋肉が硬くなると腰痛が起きやすいことがわかっています。
しっかりストレッチをしてハムストリングスの柔軟性を保つことで、腰痛を予防できます。運動にストレッチを取り入れていきましょう。
効果5:メンタルヘルスや認知症予防によい
定期的な運動はうつ病や認知症の発症予防の効果があるといわれています。
運動(特に有酸素運動やインターバルトレーニング)は、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor; BDNF)呼ばれる脳を保護するタンパク質を増加させるといわれています。このBDNFは脳細胞の保護だけではなく、脳細胞の成長を促す役目や、脳細胞間の繋がりを強化する働きもあります。
つまり運動する→BDNF分泌→脳で「新しい細胞」がつくられる→うつ病を防ぐといったメカニズムです。実際にうつ病や神経症患者はこのBDNFの分泌量が低いと報告されています。
また、運動はアルツハイマー病の原因となるアミロイドβ蛋白の蓄積を減らすことや短期記憶の容量が増加するといわれており、適度な有酸素運動や筋力トレーニングが認知症の予防に効果的と言われていたり、週3回の運動習慣を有している高齢者は認知症になりにくい、などのデータが報告されています。
特に運動と、メンタルヘルス改善や認知症予防については下記の書籍を参考にしました。名書です!是非ご一読ください!
健康のために必要な運動3選
上記の5つ効果を網羅する運動は、実はたったの3つの運動で十分です。3つの運動の中に、さらにいろいろな種類の運動に分かれるのですが、今回は一般的に行われている運動をご紹介します。
ウォーキングもしくはジョギング(主に効果1, 2, 5)
この2種類は有酸素運動であり、上記の1, 2, 5の効果を有します。有酸素運動の詳細は以下の詳しく書いていますので参考にしてください。
この記事の中では、おすすめの有酸素運動として、普段から運動をしていない人はウォーキング(4~5㎞/hから)を、少し運動をしている人にはジョギング(6㎞/hから)がおすすめだとお伝えしました。有酸素運動は心肺機能を高め、血管をしなやかにし、メンタルヘルスを向上させる効果があります。特に、血管の拡張能を高める効果は強く、動脈硬化の進展予防にはよい運動とされています。健康のための運動のメインとなるのはこの有酸素運動だと考えていますので、積極的に実施していきましょう。
ヨガ、ストレッチ(主に効果3, 4, 5)
自己でのストレッチやヨガなどの柔軟性を高める運動は上記の3, 4, 5の効果を有します。特にヨガはおすすです。ヨガはバランスや柔軟性を高め、腰痛などの身体の痛みを予防することができます。また、運動自体はどの運動もうつ病の予防効果を有するといわれていますが、その中でも、ヨガは他の運動に比べて運動が継続しやすいと報告されています。
転倒予防、腰痛などの身体の痛みの予防、メンタルヘルスの改善目的で運動にストレッチを取り入れましょう。
スクワット、腕立て伏せ(主に効果1)
この2つの運動は、無酸素運動はいわゆる筋トレです。効果1がメインの効果となります。この無酸素運動は以前にも記事を書いていますので参考にしてください。
上述した身体フレイルの特徴として、筋力低下があります。例えば、「ペットボトルの蓋が開けられない」、「階段が上れなくなった」、「信号がわたりきれなくなった」などの現象が起きたらかなりフレイルが進行していると考えてよいでしょう。
このフレイルを予防するには筋トレを中心に行うのが一番です。関連記事にも書いてあるように、スクワットや腕立て伏せなど簡単な筋トレから始めていきましょう。
まずは腕と足の運動をやって慣れてきて、他の運動もやりたくなったら別の部位の筋トレもやってみよう!
運動はそれぞれどれくらいの比率で行うべき?
健康のための3つの運動を紹介しましたが、これだけ聞くと、「3つの運動をどれも同じくらい行わなければいけないの?」や「そもそも3つでも多いよ!一つにしてよ!」と思う方もいるかもしれません。結論から申しますと、「ご自身が継続しやすい好きな割合で行えばいい」、「まずはやりやすい運動を一つだけでも始めればいい」と私は考えています。
運動はまずは継続することが重要です。普段から運動をやっていない人に比べれば、運動を少ししているだけで、健康面では「勝ち組」だといえます。自分が継続しにくい、苦手な運動を無理に続けようとするのではなく、まずは自分が続けやすい運動を行い、「自分でも継続できる」という自信をつけてから、違う種類の運動に取り組む方が継続がしやすいと考えています。
それでもあえて、有酸素運動、ストレッチ、無酸素運動のおすすめ比率を提示するのであれば、あくまで私個人の考えですが、
ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動:50%
ヨガなどのストレッチ:25%
スクワット、腕立て伏せなどの無酸素運動(筋トレ):25%
といったところでしょうか。
理由としては健康寿命を長くする運動としては有酸素運動が多くの研究報告がされているため、その比率を一番高くしています。また、運動にけがは付き物なので、その予防としてストレッチ系の運動と将来的なフレイルを予防するための筋トレを同じ比率で行うとよいと考えました。
何度も言いますが、中には有酸素運動が苦手な方もいると思いますので、まずは継続できる運動を継続すれば、問題はないと思います。3つの運動の内、自分の性格やライフスタイルに合った運動から始めていきましょう。
好きな運動を多めにやったほうが継続できるよ!
まとめ
この記事のまとめです。
・運動の効果は、筋力・体力向上、病気の予防、転倒予防、ケガの予防、抑うつ予防
・上記を網羅する運動は、有酸素運動、ストレッチ、無酸素運動(筋トレ)
・それぞれおすすめの運動は、ウォーキング/ジョギング、ヨガ、スクワット/腕立て伏せ
・有酸素運動:50%、ストレッチ:25%、筋トレ:25%の比率がよいが、継続しやすい運動から始めよう
以上です。誰もがムキムキな体を目指すわけではありません。健康のために必要な運動だけ行いたい人もいると思いますので、その参考になれば幸いです。
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